SR・DRってなに?拡大していくXR技術の可能性を探索しよう
こんにちは。ダフトクラフトのオオタです。
今回はXRの仲間「代替現実(Substitutional Reality:SR)」「減損現実(Diminished Reality:DR)」についてご紹介します。
前回のブログでは、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)はだいぶ広く私たちの生活の中で知られた存在になり、今後はそのふたつを複合した複合現実(MR)がその領域を広げていく……という話をご紹介しました。「またなんか聞き慣れない技術が出てくるのか!!」とお思いの方もいるかもしれませんが、SRとDRも実はMRの延長線上に存在する技術です。そう、MRとは、XRを理解する上で絶対に避けては通れない存在なんです。
前回紹介したMR技術のおさらいも兼ねて、今回はSR・DRの技術についてご紹介します。
目次
SRってなに?
SRとは、Substitutional Reality「代替現実」を意味する技術です。実際には存在していない虚構を、現実と置き換えて表示することができます。「虚構を表示する」という点で少しARに似ているのですが、どんな虚構を・いつ・どこに表示させるか、その判断を現実の時間・位置・形状などの情報をベースに行っているという点がARとの大きな違いになります。
例えばARゲームの「ポケモンGO」では、ポケモンのAR表示モードをユーザーがオンにしている間だけ、目の前にポケモンがいるかのような体験を楽しめます。これがSRの場合は、「いま実際の視界にいるワンちゃんが見えなくなるまでの間、ワンちゃんが自動的にポケモンに置き換わる」といった体験が可能になる、というイメージです。
事例① 「SRシステム」
2012年に理化学研究所が「SRシステム」として開発を発表して以来、SRは主にアート作品や舞台作品づくりの場面で利用されてきました。「SRシステム」では単にヘッドセットだけでなく、音声入力・出力やパノラマカメラなどの配置図までを含め、究極の「目の前で起きていることが現実なのか虚構なのかわからない」状態を作るための仕組みが一貫して整えられています。
とはいえ「現実と虚構を置き換える:代替する」という体験は、今では形を変えて、さまざまなところで体験可能になっています。
事例② TransforMR
こちらはこちらはポルシェ社、デュースブルク・エッセン大学、チューリッヒ工科大学の研究として発表されたTransforMRという技術。映像の中では、現実に走っている車をリアルタイムで空飛ぶほうきに乗った魔女に置換するという驚きの事例が紹介されています。まだ「目の前で起きていることが現実なのか虚構なのかわからない」というレベルには至りませんが、リアルタイムでここまで置換ができるようになったのは、他ならぬ技術進化の賜物!
こちらは発表のサブタイトルに「Alternate Mixed Realities」と入っているように、現実の環境や動く物体を計測・把握し、その上で仮想のものを反映させるという技術であるため、MRのくくりとして理解ができますね。
DRってなに?
DRとは、Diminished Reality「減損現実」を意味する技術です。現実に存在しているものを、仮想的に打ち消す・なかったことにできる技術です。今イヤホンやヘッドホンなどのオーディオ製品に増えている「ノイズキャンセリング機能」がありますが、その機能のビジュアル版であると考えるとわかりやすいかもしれません。DRもSR同様、約10年前から少しずつ試行錯誤が行われ、進化している技術です。
事例① 背景を打ち消すDR
現在DRは、一般顧客が使うSnapchatやTikTokなどのアプリのフィルターとしてもよく見られ、多くの人が気づかないうちに既に出会っている技術のひとつです。
事例② 人間を検知し打ち消すDR
現実のものを打ち消す方法はさまざまありますが、こちらの事例では、機械学習技術を使って被写体の「人間」を検知し、検知された部分を打ち消した後に周辺の色でギャップを埋めるような形をとっています。こうすることで、仮想的に人間が「消滅」したかのような表現を作り出すことができるというわけです。
こちらの事例も、「現実を検知・把握する」というプロセスを通るため、MR的な表現だと言えます。
以上、SR・DRの事例のご紹介でした。
現実を計測・検知し、それをどう置き換えるのか。または、どう消滅させるのか。そう考えると、SRとDRはMRの「目的違い」バージョンだと言えます。それぞれの目的別で研究が進み、それぞれに固有の呼称がついたSR・DRのように、これからもMRの仲間は増えていくのでしょうか?これからもぜひ注目してください!
太田 風美
ダフトクラフト株式会社 アシスタントディレクター